公益社団法人日本経営工学会
Last Update: 2024/5/20

会長挨拶

会長挨拶

第37期会長 開沼泰隆

 2023年6月3日の通常総会において,公益社団法人日本経営工学会の会長に選任され大変光栄と感じますとともに,この任の重責を担うことに身の引き締まる思いをしております.

 私は第30期(2009年5月~2011年5月)より12年間役員を務めさせて頂いておりましたので,この間の歴代会長及び役員の方々がご尽力されて達成されたことは今後も引継ぎ,未達成の課題については第37期の学会運営に反映させていきたい所存です.

 経営工学はご存じの通り,“やり方の科学”と言われております.対象は“モノを作るやり方”から“システムというモノを作るやり方”“組織というモノを作るやり方”などに変化してきています.これまで日本における経営工学の技術は大きく進展し,国内ばかりではなく世界中からその功績が認められてきました.これは,これまで日本の経営工学を育成されてきた多くの先人の英知の賜物であったと思います.しかしながら,1990年代初期のバブル崩壊以降,製造業の事業縮小,経営不振が数多く発生し,経営工学の技術を製造現場等で生かす機会を失ってしまいます.それ以降,日本の経済成長・景気拡大は起こらず,いわゆる失われた30年を迎えることになります.このころ,大学において工学部の再編が相次ぎ,経営工学関連学科が情報系の学科に統廃合され,経営工学関連学科の数が減少していきます.失われた30年の経済成長の低迷には,大学における経営工学関連学科及び卒業生の減少が大いに関連していると考えられます.それは,“利益がでる企業というモノを作る”“今までにない素晴らしい機能を持ったシステムというモノを作る”ことは経営工学が最も得意とする分野だからです.

 日本経済の低迷を克服するという経済的,社会的要請に応えて,新しいマネジメント技術を生み出すのは,経営工学会の使命であると考えます.私は皆様のご指導とご鞭撻の下に,学会の活動をより一層高いものにしていきたいと念願しており,そのために,次の4項目について力を入れていきたいと考えております.

  1. 経営工学の普及
  2.  博士後期課程の学生時分,外資系企業のアメリカ人取締役の自宅で,そのご婦人と新聞や雑誌のニュースについて会話をする英会話の勉強をやっていました.その時に私の専攻は何かと尋ねられ,Industrial Engineeringと答えたところ,とても良い分野の研究をしているね,という返答があり,アメリカ人はIndustrial Engineeringという分野をよく知っているんだという感想を持ちました.日本では知っている人は多くなったとはいえまだまだ少なく,もっともっと情報発信を続けていく必要性を感じています.

     現在,世の中で叫ばれているDXやSDGsなどは経営工学がテーマとして取り組んできたものであり,強みとしている分野です.特に,“うまくDXというシステムを作る”ことや“上手くSDGsを実現する組織を作る”ことは,経営工学の神髄そのものだと考えられます.

     経営工学の研究対象は,「人新世」という時代において気候変動やエネルギー消費問題,高度なデジタル技術による生産性向上やサイバー犯罪などの問題,人口の増加と食糧問題などに広がり,経営工学がこれらのソリューションを提供する学問になると信じています.ますます研究対象が拡大して社会貢献が寄与することができることは間違いありません.

  3. 学会における研究活動の活性化
  4.  最近感じていることですが,年間4号出版されている論文誌の論文数が少なくなっているように思います.同時に投稿論文数も減少傾向にあるようです.また,春季/秋季大会の発表件数や参加者も減ってきているように感じます.これは,新しく研究対象分野を見つけることが難しくなっていることと,対象とする問題も様々な要因が複雑に重なり合って,モデル化が困難になっていることが原因だと考えられます.ともすればオペレーショナルなレベルの問題に単純化して求解を目的にしてしまい,現実の問題の解としての価値が少ないこともあることでしょう.経営工学分野の研究をオペレーショナルなレベルだけではなく,タクティカル/ストラテジックなレベルの研究ができるように,企業との連携を推進して企業から問題を提起してもらい,そのソリューションの提供や理論的なサポートをするという関係を築いていこうと考えています.

     一方,大会の研究発表につきましては新型コロナ禍でオンラインの研究発表会を開催せざるを得なかったなどの理由で参加者が減少したということはありましたが,地方で開催された対面での大会では参加者も増加しています.会員の皆様が地方開催には興味を持たれていることの証左であると考えます.これまで開催していない地方の都市で開催するなど,大会を盛り上げるような企画を考えていきます.

     最後に,会員の皆様の研究活動を支援する研究プロジェクトの件数が少ない状況が続いています.会員の皆様が様々なテーマの研究ができるように,プロジェクトの研究費の上限を上げるなどの施策を行って,多くの皆様から申請が提出されるようにしていきたいと考えております.

  5. 国際的な活動への支援
  6.  経営工学会会員の皆様の国際的な活動も活発に行われております.海外で開催される国際会議への出席者及び海外から企業や大学に来て経営工学を学ぼうとする訪問者も多いことと思われます.学会がサポートできることは実施いたしますので,今まで以上に積極的に実施していただくことを望みます.

     また,日本経営工学会と海外の経営工学に関する学会の交流は重要です.それは,互いに研鑽を積み,それぞれの国の研究や実施例を紹介することは経営工学という学問の推進に貢献することができるからです.新型コロナ禍前は,韓国のKIIE,台湾のCIIEとMOUを締結して交流を行っていましたが,ここ3年ほど途絶えております.再スタートの研究交流として,博士課程学生をKIIEやCIIEの年次大会に派遣することを支援し(派遣費用の補助など),交流を積極的に推進したいと考えております.

  7. 学会員数の増加と会員サービス
  8.  日本経営工学会が社会で認められ,社会で役に立つようになるためには,学会会員数をもっと増加させる必要があると考えます.そのためには,学会は会員に対するサービスを考え,会員にとって価値のあるものにならなければなりません.残念ですが,2023年度末で正会員860名,学生会員160名,賛助会員15社という状況で,会員も減少し会員サービスも十分だとは言えない状況になっています.米国のIISE (Institute of Industrial & Systems Engineering), INFORMS (Institute for Operations Research and the Management Science), POMS (Production and Operations Management Society) の会員数,年次大会の参加者数,会員サービス(論文誌の刊行やセミナー開催)などと比較すると大きな差があります.米国の学会並みにはいかないまでも,会員サービスを考えて会員を増やすことに努力すれば,会員数が増加するだろうと信じています.

 以上の4項目を中心にできることを積極的に取り組んで,70年以上の歴史を有する光栄ある日本経営工学会をさらに発展させ,経営工学の推進,普及に貢献できるように努めてまいりますので,多くの皆様のご指導とご協力をお願いします.