(Vol.53, No.2のメモランダム「読者と編集者(RE)」より)
論文誌では、多様な形態・内容の論文を積極的に掲載して経営工学分野での研究活動を支援していきたいと思っています。特に経営工学の新規分野での活動を活性化したいとの思いで、論文投稿の区分に「萌芽的研究」というカテゴリを設けました。編集担当では、新規研究分野の先駆者に、普遍的で厳密な研究成果が得られていない状態、つまりケーススタディ的な内容でしか説明するほか段階でも発表の機会を与えたいということ、そして会員に対して新規研究分野についての情報をもっと伝えたいと考えています。
これまで数件の萌芽的研究論文としての投稿がありましたが、残念ながらいずれも従来型の技術研究論文として扱うことになってしまいました。その原因として、萌芽的研究の解釈について混乱があったように思われます。例えば、従来の論文よりも不十分な内容でも通り易いとか、経営工学分野では新しいからと、他の分野では普及している問題や手法を単純に採用しただけといった誤解もありました。
今回、萌芽的研究の論文投稿を勧誘する目的で、もう一度萌芽的研究の意味を考えてみることにしました。
以上、編集子として考えていることを述べさせていただいたが、JIMA論文誌に萌芽的研究論文が掲載され、その具体例により、会員かたがたが直接的に萌芽的研究の意義を考えていただくことが大事だと痛切に感じています。チャレンジ精神のある著者による、萌芽的研究としての強調点を論述した論文の寄稿をお願いします。
編集委員会は, 論文をなるべく新鮮なうちに掲載したいと努力しています. 論文誌編集にかかわるご意見, ご提案など論文誌編集委員会にお寄せください. この欄でできるだけ取り上げたいと思います.
今回は, 論文受付から採否決定までの統計データからみた論文誌編集の現状を述べさせていただきます.
編集部には, 1996年1月か受付分から, 全投稿論文の履歴が残っています. 採否決定までの所要時間に注目して分類集計し, 1996年と最近を比較してみました(表1).
(1) 受付から決定まで:編集部で投稿論文を受け付けた日から, 採否の決定が編集部に届いた日までの日数. ただし, B判定論文は, 判定後著者に送付された日までの日数.
(2) レフェリー査読最大値:本誌は2レフェリー制を採用していますので, レフェリーへ論文を送付してから返送されるまでの日数(複数回の場合はその合計日数)のうちどちらか長い方.
(3) 事務処理・著者修正:(1)から(2)を引いた日数―郵送時間を含む事務処理などで編集部に待機している時間と返送された論文を著者が修正する時間の合計日数.
(4) 受付から第一回レフェリー送付まで:(3)のうち, 論文受付から編集委員会が最初の査読者2名を決定して編集部が論文を送付するまでの日数.
1996年当時と最近を比較するに際し, 2001年3月末現在2000年投稿論文の多くがまだ採否決定に至らないので, 最近のデータは投稿時点ではなく, 採否決定時点が2001年3月までの1年間にあるものを採用しました. 各所要時間は, これが適正か否かは別として, 4年前と比較するといずれも有意に短縮されました. とくに, レフェリーへの督促を強化した効果が査読時間の短縮に現れています. 事務処理時間の中を見ると, たとえば1900年代には全投稿論文の1割以上あった, 受付済みだが査読者を決定する編集委員会に未提出の論文が, 2000年代には1編のみに留まっている, というような作業の改善の積み重ねが効果を上げているようです.
表1 論文投稿受付から採否決定までの日数一覧
(1)受付から決定まで |
(2)レフェリー査読最大値 |
(3)事務処理・著者修正 |
(4)受付から第一回レフェリー送付まで | |
1996年1月~12月投稿66編 平均日数(標準偏差) |
337.7(186.3) |
196.0(141.4) |
141.6(101.2) |
20.2(8.7) |
2000年4月~01月3月決定済50編 平均日数(標準偏差) |
189.9(81.2) |
96.4(47.4) |
93.5(60.4) |
18.0(9.5) |
(文責:高橋正子)