経営の複雑さや経営環境の変化が加速している産業界の中で、企業が生き残り繁栄してゆくためには、時代の流れを的確に把握し、学習することが必要です。水道哲学に代わりブランドや商品企画が重視されセル生産で造る21世紀。ホットな生きた経営工学の最新知識を実務に精通した専門家により講義していただき、大会参加者のアディショナルな知識の幅を広げ、マネジメントに役立つ統合された経営工学のステータス向上につなげるのが、JIMA大会併設のショートコースの主旨です。
昨年の平成14年春大会において好評でありましたショートコースを、引き続き平成15年春大会においても開講します。特に産業界の皆様のご参加をお勧めします。
大会テーマ | 「経営工学100年」 |
ショートコーステーマ | 「水道哲学から創造哲学時代の経営工学」 |
10:00-10:05 | 開講のご挨拶 石川 弘道(高崎経済大学) |
(1) モノ造り領域 | |
10:05-11:00 | 「リアルタイム生産管理に向かって」 黒田 充(青山学院大学) |
11:10-12:10 | 「ダイナミックペギングを実現するAPS管理モデル」 奥村 直正(イーマニファチャリン(株)) |
(2) モノ創り領域 | |
14:40-15:40 | 「新製品開発工学」 唐沢 英安(データケーキベーカ) |
15:50-16:50 | 「水道哲学経営工学から創造哲学経営工学へ」 豊島 文雄(ソニー中村研究所) |
13:30-14:30の時間帯は「科学的管理から100年:科学化からの脱却」一橋大学 沼上教授の基調講演IIがあるため中断いたします。
参考に大会テーマ「経営工学100年」にちなんだ水道哲学と創造哲学の意味するところは、下記のコンセプトです。
〔 水道哲学 〕 | 〔 創造哲学 〕 | |
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規格製品大量生産 | ⇒ | 新需要創造+人間尊重型生産システム(モノ創り+モノ造り) |
テーラーシステム | ワークセル生産システム | |
需要予測重視(買取責任) | モノの動きに合わせた情報システム(需要予測は参考情報) | |
プッシュ生産システム | 消費完結のカンバン方式 | |
検査による品質保証 | モノ造りの工場が市場クレーム処理やCRMをやる時代 |
講師:黒田 充(青山学院大学)
APSはベンダーやコンサルタントの努力によって、わが国の産業界に浸透しつつあるが、その概念の革新性や論理性、また製造会社の保守性やキーマンの不在が原因となって普及は果々しいとは言えない。APSの一つの立脚点はMRPやMRP IIの批判にあるが、多品種少量生産、製品ライフサイクルの短縮というスピードが重視される時代の生産管理のあり方を具体化したものとして理解する方が分りやすい。タイムバケットがリードタイムの単位になってはならないし、またロットまとめをする時代ではないはずである。受注に基づいて、顧客が必要とする量を、なるべく早く供給するためには、情報技術の活用は不可欠であり、ダイナミックなスケジューリングやダイナミックな資材手配はその進歩によっていまや難しいものでなくなってきた。本講義ではAPSの背景とロジックについて概説する。
講師:イーマニファクチャリング株式会社 奥村直正
日本のもの作りの根底にあった「製番管理」のフルペギング管理手法を情報技術により、動的に管理できるよう柔軟性を持たせた日本製造業発のAPS管理モデルを紹介する。
工程での最適ロットサイズや、外注、購買でのロットまとめ、さらに受注、配送などもその最適なサイズを維持したままでSCM、VCMをあたかもひとつの流れとして管理できる「メタ製番」手法により、従来の製番管理方式の弱点をカバーし、従来のMRPの細かな「ヒモ付き」管理ができないという欠点をも克服した新たなAPSモデルが日本の製造業の100社を超える実践より洗練されてきた。
このモデルでは、スケジューリングとヒモ付きMRPを上手に組み合わせることで、SCM、VCMの「流れ」自体を直接の管理対象とし、その時点時点での最適な「ヒモ付け」をダイナミックに行うことにより、会社を超えたSCM、VCMの全体最適や、ボトルネックを教えてくれる。
さらに、これらの管理モデルを、Javaで実装したことにより、インターネット環境での会社や国を超えた運用が可能になってきている。その最新事例も紹介させていただく。
講師:唐澤 英安(Data CakeBaker(株))
基礎科学の発展と知識処理の凝縮技術、そしてモジュール化の技術は、グローバルな水平分業と巨大な垂直統合でメガコンペテイションの時代を迎えたかに見える。一方、安定した環境下でスケールメリットを前提とした組織運営は限界を迎え、もっと柔軟で変化に対応するオペレーションズ・マネジメントの方法論が求められている。
一方、価値観は、モノの所有からコトの所有へと変わっている。ビジネスのサービス化に対応するためには、モノ造りの原点に立ち返る必要がる。
ここでは、ソニーのトリニトロンプロジェクトで開発されたF-PAC Systemを中心に、考え方、方法論、その運営の仕方などにつき紹介する。「フレキシビリテイ」、「イノベーション」と「自律主義」の思想で運営される、「モノの心」に迫る「明確な目標」と、「異質な諸資源」を統合するための「複合的目的群」、および役割分担された「コミュニケーション法」を持ったオペレーションのための「探索型のプロジェクトマネジメント法」である。
講師:豊島 文雄(株)ソニー中村研究所
21世紀製造メーカーの売上の源泉となる「モノ」とは、ハードウェア製品,ソフトウェア製品,顧客へのサービス供与などを言う。常に時代に敏感な人々の心を捉えるモノを提供し続けながら地球環境も含め社会に貢献し続け信頼あるブランドイメージを構築する。これからの製造業が重点を置かねばならない上記の「モノ創り」領域のソリューションを提供することが21世紀の経営工学体系に求められています。
またモノを製造する工場自身も21世紀に入り知的製造業として急激にそのコンセプトが転換しています。これまで本社機構でやっていた顧客に到るサプライチェーン上の在庫も含めたムダ取りやアフターサービス、コールセンターといったCS活動やリサイクルといった製品にまつわる全てのサービス業務の付加価値をモノ造りの当事者である工場がやるよう変化しています。グローバルな市場情報に素早く反応し翌日の生産に反映できるセル生産システムが売上が伸びなくても企業に高収益をもたらしております。こうした知的製造業への転換が急激に進んでいる「モノ造り」領域を経営工学体系に取込む事が急がれています。